ウェス・モンゴメリー(Wes Montgomery)、ジャズギタリストの中では神と崇められているギタリストの1人です。
今回の記事ではウェス・モンゴメリーというギタリストがどのような人生を歩んできたか、どんなプレイの特徴があるか、ウェスがよく弾くギターフレーズまで細かく解説していきます。
ギタリストだけでなく今回の記事ではウェス・モンゴメリーというギタリストがどのような人生を歩んできたか、どんなプレイの特徴があるか、ウェスが良く引くジャズファンの方も楽しめる記事にしていますので、ぜひご覧いただけると嬉しいです。
ウェス・モンゴメリーの生涯と活躍
まず、ウェス・モンゴメリーの生い立ちから活躍までを紹介します。
1923年3月6日生まれ、本名はジョン・レスリー・モンゴメリー
ウェス・モンゴメリーは1923年3月6日にアメリカ合衆国インディアナ州インディアナポリスの音楽一家に生まれました。
本名はジョン・レスリー・モンゴメリー(John Leslie Montgomery)と言います。「ウェス」はレスリー(Leslie)を短くしたものと言われています。
兄のモンク・モンゴメリー(Monk Montgomery)はウッドベースとエレクトリックベースを演奏し、弟のバディ・モンゴメリー(Buddy Montgomery)はヴィブラフォン、ピアノを演奏しました。
3人はモンゴメリー・ブラザーズ(Montgomery Brothers)として数枚のアルバムを共同制作しています。
ギターは20歳から弾き始めた
最近のギタリストは中学生、高校生の頃からギターを弾き始めるのが一般的ですが、ウェスは20歳からギターの練習を始めました。
やや遅咲きのギタリストです。
練習は主にチャーリー・クリスチャンの耳コピだったとのことです。
2年間の楽団での演奏生活
1948年、ウェスが25歳の頃からはヴィブラフォンの名手ライオネル・ハンプトンの楽団に参加し、1950年の1月までプレイしました。
1950年代は昼職をしながら夜演奏する生活
1950年代は故郷のインディアナポリスに戻り、昼は音楽と関係の無い仕事をして、夜はライブハウスでプレイするという生活を続けました。
そしてこの頃に前述した兄弟とアルバムを制作しています。
1960年代にギタリストとして花開く
1959年、ウェスが36歳の頃にニューヨークのジャズレコードレーベル「リバーサイド・レコード」と契約してから一気にギタリストとして花開きます。
1960年には『The Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery』を発表し、ウェスの名前がジャズ界隈で有名になりました。
その後もウェスのファンならお馴染みのライブアルバム「Full House」などの名作を作り出します。
1967年にはハードバップスタイルから大衆向けのイージーリスニングに路線を変更。「A Day In The Life」はビルボード誌のジャズ・アルバム・チャートで首位を獲り、R&B部門でも2位という記録を納めました。さらにビルボードに掲載されている売上上位200位が選ばれる「bill」アルバムがベストセラーとなったことで、セールス的にも成功を納めました。
ウェス・モンゴメリーのプレイスタイル
ウェスはオクターブ奏法をはじめ、ジャズギターの表現を広げたギタリストと言えます。
彼のギタープレイの特徴を解説します。
サム・フィンガー・ピッキング
ウェスはギターを演奏する際に主にサム・フィンガー・ピッキングを多用しました。これは親指を使って弦をかき鳴らすテクニックで、彼の音楽に独特のウォームでスムーズな音色をもたらしました。
シングルノート・ソロ
シングルノートのソロ演奏に優れ、シンプルなメロディは情緒豊かに奏で、スケールアウトを含むフレーズをスピーディーに弾くこともできました。彼のギタープレイは非常に感情豊かで、しばしば情熱的でメロディアスなフレーズを含んでいました。
オクターブ奏法
オクターブ奏法はオクターブ上の音を同時に弾き、音に厚みを持たせるためのテクニックです。
ウェスはこのオクターブ奏法をこれでもかというぐらい好んで使用しました。オクターブ奏法をここまで有名にしたのは間違いなくウェスです。現代ではロックバンドがよく使うテクニックとしても浸透しています。
テクニックによってウェスは独自の音楽性を形成することができました。
ピアニッシモとフォルティッシモ
ウェスはダイナミクスを効果的に使用し、楽曲内で非常に静かなピアニシモから力強いフォルティッシモまでの音量の変化を表現しました。これにより、彼の演奏は感情豊かでダイナミックなものとなりました。
クリアな音色
ウェス・モンゴメリーのギター音色はクリアで透明であり、その音楽は非常に明瞭で聴きやすいものでした。メロディーもスケールアウトを多用することは少なく、聴きやすいフレーズが多いです。
主な共演者
ウェス・モンゴメリーはそのキャリアの中で多くの優れたミュージシャンと共演し、ジャズの歴史に名を刻みました。
今回はウェスの代表的なアルバム『Full House』のレコーディングに参加したメンバーについてフォカーカスして紹介します!
ウィントン・ケリー(piano)
ウィントン・ケリー(Wynton Kelly)は1959年から1963年にマイルス・デイビスのクインテットでピアニストとして活躍したプレイヤーです。
マイルスに「レッド・ガーランドとビル・エヴァンスのハイブリッド」と称されるほどの名手です。
ウェス・モンゴメリーはウィントン・ケリーのトリオと共演し、ウェスの代表的なアルバム『Full House』や『Smokin’ at the Half Note』などで彼と共演しました。
ポール・チェンバース(bass)
ポール・チェンバース(Paul Chambers)はマイルス・デイビスのクインテットで活躍したベーシストです。
ウィントン・ケリーとも3年間一緒に演奏をしていました。
ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、バド・パウエル、キャノンボール・アダレイといった多数の大御所との共演経験を持つベテランです。
サイドマンとして多くの経験を積んできた彼は、モードジャスやフリージャズが流行になった際もオーソドックスなモダンジャズを演奏し続けました。
ジョニー・グリフィン(ts)
ジョニー・グリフィン(Johnny Griffin)は1945年からライオネル・ハンプトンの楽団で活躍したテナーサックス奏者です。
他にもセロニアス・モンクやアート・ブレイキー、ジョン・コルトレーンとも共演経験がありむす。一時は「西海岸で最も速いサックス奏者」と言われたほどの技巧の持ち主です。
ジミー・コブ(dr)
ジミー・コブ(Jimmy Cobb)はウィントン・ケリー、ポール・チェンバースとともにハードバップの全盛期に活躍したドラマーです。
90歳を過ぎてもなお現役で「コブズ・モブ」「ジミー・コブ・トリオ」というバンドを率いて活動していました。
キャノンボール・アダレイ、ジョン・コルトレーンとも共演し、ジャズの黄金期を知るミュージシャンとして後進の育成にも尽力しました。
多くの著名なミュージシャンと共演して素晴らしい音楽を創り続けたのですね!
ウェス・モンゴメリーの代表的な作品
ウェス・モンゴメリーの代表的な作品を紹介します。
Full House (フルハウス)
前述の共演メンバーとレコーディングしたアルバムです。1962年に発表されています。
ジョニー・グリフィンと組んで制作された『Full House』からは多くを学んだ。スウィング、ソロ、伴奏の模範的な手法がすべて一つのアルバムに凝縮されている。
ジョン・スコフィールドのコメント
インクレディブル・ジャズ・ギター(The Incredible Jazz Guitar Of Wes Montgomery)
1960年に発表されたアルバムです。
この世界に入ってから、気づくと一枚のアルバムばかり聴いていたんだ。それが「インクレディブル・ジャズ・ギター」だった。ウェスのラインの組み立て方とその動向に魅了されていた。なんとも詩的でね。ウェスとジム・ホールは2人ともリリカルなプレイヤーで俺のプレイは彼らからの影響が大きい。
ジョン・アバークロンビーのコメント
ゴーイン・アウト・オブ・マイ・ヘッド(Goin’ Out Of My Head)
1966年に発表されたアルバムです。
ユニバーサルミュージックジャパン:ゴーイン・アウト・オブ・マイ・ヘッド
私が初めて聴いたウェスのアルバムが「ゴーイン・アウト・オブ・マイ・ヘッド」だった。ケニー・バレルもジョー・パスも素晴らしいサウンドを持っていたが、ウェスのようにレコードの枠を超えたプレイを聴かせてくれる人はいないね。ウェスのサウンドはただただ大きくて、ふくよかで、暖かいんだ。
リー・リトナーのコメント
ウェス・モンゴメリーのギターフレーズ
ウェスの音源を聴いてフレーズをいくつかコピーしました!ウェスはインサイドのフレーズをよく使います。
Dm7上で使えるフレーズです。すべての音がインサイドです。
これもDm7上で使えるフレーズです。
9th, 11th, 5th, ♭7th, 5thの並びになっています。
Fm7で使えるフレーズです。Full Houseでウェスが弾いていました。
9thから弾き始めてオクターブ上の9thまで上がります。そこからまた別のフレーズに繋げるといい感じです。
Fm7上で使えるフレーズです。
♭5thから下がってくるフレーズで、手癖にすれば結構使いどころがあります。
C7上で使える三拍子のミクソリディアンフレーズです。
B♭7のオルタードフレーズです。♭9thと♭5thが効いてます。
ジャズ初心者の方にも使ってもらいやすいフレーズが多いですね!
ウェス・モンゴメリーの使用機材
ウェスが使用したギターとアンプについて紹介します。ウェスの音に近づくにはぜひ手に入れたい機材たちです。どれもいいお値段しますけどね笑
ギター
ウェスがギブソンのフルアコースティックギターを好んで使っていました。ウェスが使っていたギターの機種をまとめておきます。
Gibson L-5 CES
DVD『Jazz 625』やDVD『Live In ’65』、Blu-ray『The NDR Hamburg Studio Recordings』などでウェスが使用しているのを見ることができる、ボディにハート型のインレイが入ったL-5です。
ウェスが使用するL-5の特徴として、リアピックアップを廃しフロントのピックアップのみであることです。硬い音を使わず、親指で柔らかい音を出すことに特化させた、ウェスが希望した仕様です。
Gibson ES-175
1949年にGibson L-5の廉価版として発売されたギターですが、数々の名ギタリストが使用してきたギターで、ウェスも使用していました。
ES-175の175は「175ドルで買える」というところから名付けられたとのこと。今ではフルアコの代表格として地位を確立しています。
Gibson L-7
1930年代から40年代 、ギブソンのアーチトップギター最盛期の只中に生まれたのがL-7で、L-5と同じぐらい人気になりました。1959年のトリオの録音でウェスがケニー・バレルから借りて弾いていたという話があります。
ビッグバンドの中で弾いても音が埋もれないように17インチ・アーチトップという仕様になっています。
アンプ
ウェスが使用していたアンプについてまとめました。
Standel Super Custom XV
Fender Twin Reverb が発売された1965年に同じく発売され、ウェスがヨーロッパツアーで採用しました。
スピーカーは1基積まれています。
重量がTwin Reverbよりも6kg軽く、ツアーでの取り回しを重視したため採用されたようです。
ちなみに、現在のStandel社はギターアンプ以外にもマイク、ヘッドホン、ケーブルなどを扱う総合音響機器メーカーとして展開しています。
Fender Twin Reverb
1965年、通称ブラックフェイス期に発売され、フェンダー社製のアンプで最も知名度が高いアンプ(のはず)です。
スピーカーは2基積まれています。
ほとんど歪まない暖かなクリーンサウンドが特徴でジャズやカントリーのミュージシャンに愛されました。今なお人気を保つロングセラー製品です。
Fender Super Reverb
こちらもブラックフェイス期に発売されたアンプです。スピーカー4基になんと総重量33kg超え!ジャズやカントリーに求められるクリーンなサウンドからSRVが出すようなクランチサウンド、歪みまでカバーし、オールマイティに使えるアンプです。
現在はSuper Reverbの音を再現したトランジスタアンプが販売されています。
まとめ
ウェスの経歴、共演者、音源、ギターフレーズについて解説してきました。
ウェスはジャズの黄金期に活躍し、後世のギタリストに多大な影響を及ぼしたギター・ヒーローであると言えます。
時にメロディアスで時にテクニカル、インサイドからアウトフレージングまで器用にこなす。私もそんなウェスのようなギタリストを目指して日々練習を重ねたいものです。
この記事が皆様のご参考になれば幸いです。
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